No.260
ダニエルとカネアが
ティファかエアリスかで
しっちゃかめっちゃか喧嘩してる謎小話↓
路地裏で拾われた年季の入ったブラウン管が、か細い走査線を震わせていた。その前に陣取るカネアは、コントローラーを握る手に無用の力を込めている。映るは角ばったポリゴンの『ファイナルファンタジーVII』――インターナショナル版(中古)だ。
今宵は物語の岐れ道、ゴールドソーサーのデート・イベントを目前にしている。
「……当然、エアリスですわよね」
カネアはひとりごち、エアリスに語りかけようと身を乗り出した。
「ちょっと待ったぁぁぁ‼️」
そこへ脇に控えていたダニエルが、電光石火、カネアの手首をつかむ。
「な、何をするんですの⁉️」
「そこはティファでしょう!どう考えても!幼馴染ですよ⁉️ずっと主人公を支えてきた健気なヒロインを差し置いて、ぽっと出の花売り娘を選ぶなんて正気ですか!?」
ダニエルの熱弁を浴びせられ、カネアの眉間に小さな稲妻が走った。
「ぽっと出とはなんですの!失礼な!エアリスは古代種の末裔、選ばれし高貴な存在ですわよ! まるで……そう、まるでこのあたくしのように、守られるべき悲劇のプリンセスなのですわ!」
カネアは自らをエアリスの悲運と優雅に重ねてみせる。
「いやいや、カネア様。鏡を見てください。今のあなたは古代種というより、古代の遺跡から発掘された土偶みたいなジャージ姿ですよ」
「なんですってーーっ‼️」
バゴッ!
コントローラーは見事ダニエルの顎をとらえ、その鈍い音が室内にこだました。
「痛っ!でも譲れません!わたしはティファ派です!あの献身的な愛!自分の店(セブンスヘブン)をアジトに提供して、料理も振る舞って、一緒に戦ってくれる。あれぞ理想のパートナーでしょうがよ!」
「ハッ!何が献身的な愛よ!あなた、本当はあのおっぱいに目が眩んでいるだけじゃなくて⁉️」
ダニエルは視線を宙に漂わせ、逃げ場を探した。
「そ、そんな不純な動機じゃありませんよ! ……まあ、確かにあのタンクトップ姿は、健全な男子の視線を釘付けにするというか、ある種の芸術作品というか……」
「ほらごらんなさい!このエロ目!信じられない!結局、男はみんなそういう、分かりやすい記号に弱いんですのね!」
「記号じゃない!ティファの魅力は内面から滲み出る母性です!」
「母性?笑わせないで!あなた、普段あたくしに『小言が多い』だの『オカンみたいだ』だの言ってるくせに、ゲームの中の女には母性を求めるわけ?都合が良すぎますわ!」
「うっ……」
ダニエルは絶句する。考えてみれば現実のカネアの小言と、理想のティファの小言とでは、天地ほどに差があるのだった。
「エアリスの方が絶対にいいですわ!あのちょっと強引なところとか、クラウドをリードしてくれるお姉さんな一面とか、最高じゃありませんの!」
「それ、カネア様が普段わたしにやってる『理不尽な命令』を美化してるだけですよね⁉️ 現実であれをやられたら、男は疲弊する一方なんですよ!」
「何よ!あなた、あたくしに疲弊しているというの⁉️」
「い、いえ!滅相もございません!ただ、ゲームの中くらい、癒やされたいというか……」
「癒やし?なら尚更エアリスでしょう! あの回復リミット技の数々を見なさい! 存在そのものがヒーラーなんですのよ!」
「ティファだって敵をボコボコにしてストレス解消させてくれます!」
「それが癒やしですの⁉️あなたの精神構造はどうなっていますの⁉️」
夜半の朽ちビルに、取っ組み合いの修羅場が広がる。💥ポカポカポカポカ💥
「ええい、離しなさい!あたくしはエアリスとデートするんですの!」
「ダメだ!俺が許さん!ティファの好感度を上げるんだ!さもないと電源コードを抜くぞ!」
「最ッ低!人間のクズですわ!」
『あの……カネア様、ダニエル。大変申し上げにくいのですが』
そこへMAMの冷えた声が横合いから割って入った。
『お二人のセーブデータを確認したところ、これまでの選択肢がどっちつかず過ぎて、このままだとバレットとデートすることになります』
「「…………は?」」
二人の動きは、糸を切られた操り人形のようにぴたりと止まる。
「……バレット? あの、暑苦しい筋肉ダルマと……?」
「……クラウド(俺)が……男と……観覧車に……?」
プツン。
老いぼれたブラウン管は熱に耐えかね、闇へと沈んだ。
「あ」
「……セーブ、してませんわよね」
真暗な室内で二人は棒立ちになり、ただ沈黙だけが漂う。
ティファ派もエアリス派も、この瞬間ひとしなみに無となった。
「……寝ましょうか、カネア様」
「……ええ。もう、どうでもよくなりましたわ」
やがて二人はぼろ布団に潜り込み、互いの背を向けてふて寝を決め込む。
カネアはエアリスの面影を帯びたダニエル(幻覚)を、ダニエルはティファのような胸のカネア(願望)を、それぞれ追い求めて夢を見た。
畳む
ティファかエアリスかで
しっちゃかめっちゃか喧嘩してる謎小話↓
路地裏で拾われた年季の入ったブラウン管が、か細い走査線を震わせていた。その前に陣取るカネアは、コントローラーを握る手に無用の力を込めている。映るは角ばったポリゴンの『ファイナルファンタジーVII』――インターナショナル版(中古)だ。
今宵は物語の岐れ道、ゴールドソーサーのデート・イベントを目前にしている。
「……当然、エアリスですわよね」
カネアはひとりごち、エアリスに語りかけようと身を乗り出した。
「ちょっと待ったぁぁぁ‼️」
そこへ脇に控えていたダニエルが、電光石火、カネアの手首をつかむ。
「な、何をするんですの⁉️」
「そこはティファでしょう!どう考えても!幼馴染ですよ⁉️ずっと主人公を支えてきた健気なヒロインを差し置いて、ぽっと出の花売り娘を選ぶなんて正気ですか!?」
ダニエルの熱弁を浴びせられ、カネアの眉間に小さな稲妻が走った。
「ぽっと出とはなんですの!失礼な!エアリスは古代種の末裔、選ばれし高貴な存在ですわよ! まるで……そう、まるでこのあたくしのように、守られるべき悲劇のプリンセスなのですわ!」
カネアは自らをエアリスの悲運と優雅に重ねてみせる。
「いやいや、カネア様。鏡を見てください。今のあなたは古代種というより、古代の遺跡から発掘された土偶みたいなジャージ姿ですよ」
「なんですってーーっ‼️」
バゴッ!
コントローラーは見事ダニエルの顎をとらえ、その鈍い音が室内にこだました。
「痛っ!でも譲れません!わたしはティファ派です!あの献身的な愛!自分の店(セブンスヘブン)をアジトに提供して、料理も振る舞って、一緒に戦ってくれる。あれぞ理想のパートナーでしょうがよ!」
「ハッ!何が献身的な愛よ!あなた、本当はあのおっぱいに目が眩んでいるだけじゃなくて⁉️」
ダニエルは視線を宙に漂わせ、逃げ場を探した。
「そ、そんな不純な動機じゃありませんよ! ……まあ、確かにあのタンクトップ姿は、健全な男子の視線を釘付けにするというか、ある種の芸術作品というか……」
「ほらごらんなさい!このエロ目!信じられない!結局、男はみんなそういう、分かりやすい記号に弱いんですのね!」
「記号じゃない!ティファの魅力は内面から滲み出る母性です!」
「母性?笑わせないで!あなた、普段あたくしに『小言が多い』だの『オカンみたいだ』だの言ってるくせに、ゲームの中の女には母性を求めるわけ?都合が良すぎますわ!」
「うっ……」
ダニエルは絶句する。考えてみれば現実のカネアの小言と、理想のティファの小言とでは、天地ほどに差があるのだった。
「エアリスの方が絶対にいいですわ!あのちょっと強引なところとか、クラウドをリードしてくれるお姉さんな一面とか、最高じゃありませんの!」
「それ、カネア様が普段わたしにやってる『理不尽な命令』を美化してるだけですよね⁉️ 現実であれをやられたら、男は疲弊する一方なんですよ!」
「何よ!あなた、あたくしに疲弊しているというの⁉️」
「い、いえ!滅相もございません!ただ、ゲームの中くらい、癒やされたいというか……」
「癒やし?なら尚更エアリスでしょう! あの回復リミット技の数々を見なさい! 存在そのものがヒーラーなんですのよ!」
「ティファだって敵をボコボコにしてストレス解消させてくれます!」
「それが癒やしですの⁉️あなたの精神構造はどうなっていますの⁉️」
夜半の朽ちビルに、取っ組み合いの修羅場が広がる。💥ポカポカポカポカ💥
「ええい、離しなさい!あたくしはエアリスとデートするんですの!」
「ダメだ!俺が許さん!ティファの好感度を上げるんだ!さもないと電源コードを抜くぞ!」
「最ッ低!人間のクズですわ!」
『あの……カネア様、ダニエル。大変申し上げにくいのですが』
そこへMAMの冷えた声が横合いから割って入った。
『お二人のセーブデータを確認したところ、これまでの選択肢がどっちつかず過ぎて、このままだとバレットとデートすることになります』
「「…………は?」」
二人の動きは、糸を切られた操り人形のようにぴたりと止まる。
「……バレット? あの、暑苦しい筋肉ダルマと……?」
「……クラウド(俺)が……男と……観覧車に……?」
プツン。
老いぼれたブラウン管は熱に耐えかね、闇へと沈んだ。
「あ」
「……セーブ、してませんわよね」
真暗な室内で二人は棒立ちになり、ただ沈黙だけが漂う。
ティファ派もエアリス派も、この瞬間ひとしなみに無となった。
「……寝ましょうか、カネア様」
「……ええ。もう、どうでもよくなりましたわ」
やがて二人はぼろ布団に潜り込み、互いの背を向けてふて寝を決め込む。
カネアはエアリスの面影を帯びたダニエル(幻覚)を、ダニエルはティファのような胸のカネア(願望)を、それぞれ追い求めて夢を見た。
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